IMJが産学共同研究を続ける理由(前編)

IMJ R&D室では年間に十数件あまりの研究開発プロジェクトを実施します。

 

手技法の開発や実証実験であったり、直近のビジネステーマから逸脱するような(しかし将来の事業設計に必要な)デザインリサーチであったり、あるいはビジネスモデルそのもののプロトタイピングによる事業性の評価であったりと目的は様々ですが、特に先進的なプロジェクトにおいて優先的に取り入れるのが特定の大学や教育機関と連携して進める「産学共同研究」です。

 

通常、受託ビジネスにおけるプロジェクトというのは「必ず成功する」ということをお約束したうえで着手します。クライアント様の予算をお預かりして実施するのですから当然といえば当然なのですが、実はこの「成功必達」を事前に約束するというのはサービスデザインの実態に必ずしもそぐわないという側面があります。

 

現場に従事されている方ならお分かりかと思いますが、サービスデザイン(あるいはデザイン思考)において物事を進めるにあたって重要視することに、

  • ユーザーの視座で物事を考え、定性データドリブンなデザインを行う(Empathy & Ideate)
  • 失敗からの学びと改善を目的として、失敗をマネジメントする(Prototyping & Testing)

の2点があります。これらはともにプロジェクト実施中においていわば「蛇行」を伴うことを意味しますが、これが実はなかなかクライアント様へのご説明が難しい点です。もちろん結果的にはかならず成果や収穫があることは確かなのですが、そのプロセスに「無駄」や「怪しさ」が含まれていることもまた事実であり、成果が出るかもしれないがそのプロセスに無駄を含むように見えるもの、怪しいものにはなかなかお金を払いたくないというメンタルが決済を阻んでしまいます。

 

これが特に日本においてしばしば見られる「サービスデザインの壁」です。

私はここに、アジャイル開発が日本でなかなか普及しない理由に共通するものを感じます。

 

ちょうど先日、知人がFacebookでシェアしていたこの記事に、アジャイル開発がアジアで普及しない原因に関する考察が記されていました。詳しくは原文をお読みいただきたいのですが、これはまったくサービスデザインの壁とも共通していると感じました。注目すべき点をまとめると、

経営者やクライアント(財布の紐を握る人たち)に対して不都合な、しかし真実として見過ごせないデータとレポートがあっても、顔を立てる文化圏の人たちはこれを伝えることが困難である

物事は予測が可能である、という文化に慣れ親しんだ人たちにとって、アジャイル開発が必要とされる開発、複雑で創造的な開発における「予測不能性」を受け入れることが困難である

東洋において一般的な「点数の獲得とランキング=結果を重視する教育システム」と、西洋の「失敗からの学びや議論の巻き起こり=思考能力の獲得を重視する教育システム」との違いがあり、後者を前提としたアジャイル開発が前者においてフィットしない

このように書いてあります。能力の問題ではなく、教育と文化の呪縛であるというのです。しかし、これではいつまでたってもサービスデザインが始まりません。「物が売れない時代の有効な処方箋」たるサービスデザインが、対抗不可能な文化論で否定されてしまうのはあまりにも勿体ないことですし、なにより未来がありません。

 

そこでIMJでは、一つの裏ワザとしての「産学共同研究」を基盤要素のひとつとして活用することで、このサービスデザインの壁を「乗り越えるのではなく、壊してしまおう」と考えました。

 

具体的に、どのような取り組みをしているのか。記事の後半では、ギリギリ公開できるところまでをご紹介したいと思います・・・

 

(後編につづく)

株式会社アイ・エム・ジェイ R&D室
マネージャー/リードストラテジスト HCD-Net認定 人間中心設計専門家
UX戦略およびサービスデザインにおける全工程的なコンサルティング、国内におけるサービスデザイン・プロジェクトの先進研究、手技法およびプロセスの開発を主な業務とする。